東京競馬場で行われる春のマイル王決定戦、安田記念は、日本を代表するマイラーたちが集うビッグレースです。春のGⅠシリーズのしめくくりとして、多くの競馬ファンがこのレースに注目しています。
安田記念の最終追い切りは、レース予想に欠かせない、とても大切な要素です。実績のある強い馬であっても、最高の状態にあるかどうかは、最後の追い切りを見れば分かります。また、人気のない馬が好走するヒントも、じつは追い切りの内容に隠されていることがほとんどです。
この記事では、2025年の安田記念に出走を予定しているすべての馬の最終追い切りについて、くわしくお伝えします。それぞれの馬の動きや状態をしっかりと評価し、「どの馬が本当に良い状態なのか?」「追い切りの内容から、どんな勝負気配が見えるのか?」といった点に注目。人気の馬はもちろん、あまり人気のない馬まで、丁寧に分析していきます。
各馬の追い切り診断と考察
評価は【S/A/A-B/B/B-C/C/D】の7段階評価です。 評価について、詳しくはこちらをご覧ください。
ウインマーベル【前走海外】
2頭併せ強め1馬身先着。
僚馬の内を追走し、直線では力強く突き放す走りを見せました。ただ、リズムよく走れていたというよりは、やや動きに重さが残るようにも感じられます。
また、なんとか制御が効いているという表現が正しいほど、自ら走る気持ちを前面に出していました。レース本番でいかに落ち着けるかがカギとなりそうです。
状態としては、好走した12月の阪神カップ程度にはあると見てよいでしょう。
ウォーターリヒト【C】
単走強め。
まっすぐに走れていない点は減点材料です。時計も、稍重馬場を考慮しても物足りなさが否めません。
冬場の走りとの比較は難しい面もありますが、前走の方に勢いがあったように感じられます。時計的な裏付けも乏しく、走りの勢いも感じられませんでした。
エコロヴァルツ【B】
単走馬なり。
走りは雄大ですが、時計が伴っていない印象です。馬なり調整なので時計はこの程度でも問題ありませんが、動きからはもう少し時計が出てもよさそうに感じます。
まっすぐ前を向いて走れていない点は気になりますが、走りそのものは大きく、元気のよさがうかがえる点は好材料でしょう。
状態は前走同様で、特にデキ落ちという評価は必要ないでしょう。
ガイアフォース【B】
単走馬なり。
活気あふれる走りで、それが時計にも表れています。ブリンカーの効果も感じられ、怖い一頭です。
ただ、全体的に上へ跳ねるような走りで、活気はありますが時計以上に良く見せるものではないかもしれません。もう少し前肢がスムーズに出れば理想ですが、地面を叩きつけるような走法が今の東京の馬場に合うかは微妙なところです。
仕上がり自体は悪くなさそうなため、展開や当日の馬場状況次第では、という印象。昨年4着の実績はありますが、今年も同じように好走できるかは展開次第でしょう。
グラティアス【B】
単走強め。
時計以上に力強い走りでした。集中力が高く、まっすぐ前を見て走れている点は評価できます。
ただ、近走の成績を考慮すると、もう少し上昇気配が欲しいところ。状態はよさそうなだけに、もう一段階変わり身が見られれば、といった印象です。
サクラトゥジュール【A-B】
単走馬なり。
飛び出していきそうなほどの勢いでコーナーを回ってきます。もう少し落ち着きがあれば、なお良いでしょう。
昨年の東京新聞杯を優勝しましたが、今年の同レースは15着に敗れるなど、東京コースとの相性云々よりも、当日の状態が大きく影響しそうです。その点、今回は勢いが感じられ、侮れない存在となりそうです。
シックスペンス【B】
2頭併せ強めクビ差先着。
僚馬の3馬身ほど後方からコーナーを回り、内を通って直線入り口で並びかけると、最後はクビ差先着しました。
直線では突き放しそうな勢いがありましたが、クビ差の先着にとどまった点は少し気になります。
とはいえ、走りの雰囲気は悪くなく、善戦以上の走りには期待が持てそうです。ただ、勝ち切るところまではどうか、という印象も受けます。
ジャンタルマンタル【前走海外】
単走強め。
ウッドチップを力強く蹴り上げ、しっかりとした脚さばきを披露。元気の良さは映像からも伝わってきます。
1週前にも坂路で全体50.1秒という好時計を記録しており、やや時計を出しすぎた感もありましたが、最終追い切りの様子を見るとその心配はなさそうです。
海外帰りの影響も、この間隔があいていれば問題ないでしょう。
ただ、ここまで順調さを欠く場面もありました。昨秋は熱発で出走を回避し、今回は12月以来、約半年ぶりの実戦となります。その点で、実戦感覚のブランクをどう判断するかがポイントになります。
シャンパンカラー【B-C】
単走強め。
鞭を使っているように見えますが、強く追われているわけではありません。まっすぐ走らせるための、軌道修正の意図が強い印象です。
状態としては、あまり良いとは言えないでしょう。全体的に、前走よりも状態は上がっていないように感じます。時計は出ていますが、この強力なメンバー構成では厳しい戦いを強いられそうです。
ジュンブロッサム【B】
単走馬なり。
馬なりと強めの中間程度で、軽く促される内容でした。最終追い切りは軽めの内容にとどめています。
1週前には栗東CWコースでラスト1ハロン10.9秒という鋭い時計を出していますが、頭の高い走法が少し気になります。前走の最終追い切りではもう少し時計を出していただけに、今回パターンを変えてきた点も気がかりです。
動き自体も前走の方が良く見えただけに、もう少し時計が出ていてもよかったと感じます。成績は比較的安定しており、昨秋の富士ステークスを制している東京コースは得意舞台のはず。東京新聞杯は大敗しましたが、今回は上位進出までと見ています。
ソウルラッシュ【前走海外】
単走強め。
追われてからの動きと時計が、やや伴っていない印象を受けます。
ただ、1週前には栗東CWコースで6ハロン81.5秒、ラスト1ハロン10.5秒という破格の時計を記録。海外遠征の疲労は感じられません。マイルチャンピオンシップから香港マイルと走り、帰国初戦の中山記念で3着と好走していることから、今回のドバイ帰りも気にする必要はないでしょう。
1週前の時計が素晴らしかっただけに最終追い切りにも期待しましたが、動きの大きさの割に時計が出ていない、つまりオーバーアクション気味に見える点が気になります。一杯に追われすぎている印象もあり、調整が強すぎないか少し心配です。とはいえ、追い切り診断としては近走の中でも上位の仕上がりと判断します。
ダディーズビビッド【B】
単走末強め。
走行フォームはきれいです。時計も水準レベルは出ており、状態は悪くないでしょう。
7歳という年齢で、前走G3の六甲ステークスを勝ったばかり。ここでG1好走となるとハードルは高い印象ですが、良好な状態を維持していると判断します。
トロヴァトーレ【B】
2頭併せ内強め併入。
カメラの角度から判断が難しいですが、クビ差ほど僚馬に遅れていたかもしれません。
時計自体は良く、走りの雰囲気も悪くありません。しかし、最後は楽な手応えの僚馬に競り負けたように見えた点は、やや物足りなさを感じます。
ここまで6戦連続で連対していますが、今回は相手が強化されるため、人気になりにくい印象です。東京マイルは2戦2連対と得意にしており、穴馬として面白い存在かもしれません。しかし、G1の舞台では実績的に見劣りする感は否めません。
ブレイディヴェーグ【前走海外】
2頭併せ内末強めクビ差遅れ。
コースのコーナー部分を通過しているため、時計は参考程度に見てください。
参考時計ではありますが、悪くない数字です。ただ、楽に走る僚馬に最後は離されそうになるなど、ちぐはぐな印象も受けます。
コーナーで少し行きたがる素振りを見せており、活気があり余っているようにも見えます。本番でも同様に、気性面の制御がカギになりそうです。状態自体は、前走から大きく変わらないと判断します。
ホウオウリアリティ【B】
単走馬なり。
馬なり表記ですが、軽く促される場面もありました。もう少し活気があってもよさそうですが、動きと時計は見合っています。
状態は前走程度を維持していると見ます。7歳の夏という年齢を考えると、ここでの大幅な上積みまで期待するのは酷かもしれません。相手なりに走れるタイプなので、今回もその範囲内での走りとなりそうです。
マッドクール【A-B】
単走馬なり。
軽快な走りですが、動きからはもう少し時計が出てもいいように感じます。活気はあるものの、動きの大きさの割に時計が平凡なのは、やや力のロスがある走りなのかもしれません。
ただ、前走時と比較すると、今回は集中力が高く、前向きさも感じられます。1週前には栗東CWコースで好時計を記録しましたが、しっかり追われた内容からは、1600mという距離への対応が少し心配になります。スプリントが主戦場ですが、マイルの流れと距離に対応できるかどうか。
レッドモンレーヴ【】
2頭併せ外馬なり半馬身先着。
実戦を想定し、僚馬を前に置いて、直線で外に出すという内容の追い切りでした。やや動きに重さを感じますが、状態が悪いというほどではなく、判断に迷うところです。
まだ良化の余地はありそうですが、現状でも前走程度の力は出せると見ています。
最終追い切り評価
今回の追い切りで上昇気配を示したのは、【A-B】評価のサクラトゥジュールとマッドクールの2頭でした。
【B】評価の中では、ガイアフォースとシックスペンスの2頭が高評価です。
その他、前走が海外だった馬の中から注目馬を探していくのがよいでしょう。
1頭目は海外組のアノ馬
前走海外で結果を残したソウルラッシュを1頭目に推奨します。
海外帰りの疲れを感じさせない、素晴らしい走りを見せてくれました。勝ち負けは当然として、勝ち切るレースに期待が持てます。
2頭目は前走からの巻き返しを狙うジャンタルマンタル
次点は、昨年のNHKマイルカップの覇者ジャンタルマンタルです。今の東京コースの状態を考慮しても、上位進出は可能と判断しました。
追い切りの内容も悪くはなく、久々の影響もなさそうに感じます。マイル路線の主役に躍り出れるか、注目です。
3頭目はガイアフォース
復活の兆しが見えるガイアフォースを3頭目に挙げます。追い切りの内容もよく、なにより東京マイルは得意な舞台。安田記念で2年連続4着という実績もあり、善戦以上の活躍に期待したい一頭です。
4頭目は穴っぽいところでマッドクール
追い切りの雰囲気は上々の1頭。血統的にはスプリント色が強いですが、昨年末の阪神カップ(G2)で2着と好走しています。昨年の高松宮記念以降は苦戦が続いていますが、今回の状態面には見るべきものがあり、楽しみな存在。ここでの大駆けに期待したいところです。
以上、安田記念の追い切り考察でした。馬券の参考になれば幸いです。